WordPressやWix、Shopifyなど、専門知識がなくてもWebサイトを作れるツールが充実し、制作のハードルは劇的に下がりました。YouTubeを見れば無料の制作講座があふれ、AIが自動でコードを生成してくれる時代にもなりました。 では、Web制作会社やフリーランスのWeb制作者は、もう必要ないのでしょうか?

この記事では、Web制作業界で活動する一人の制作者として、業界の現状と未来について、率直な思いを綴ります。綺麗事ではなく、現場で感じているリアルな本音をお伝えします。

Web制作業界の劇的な変化

かつてのWeb制作業界

2000年代初頭、Webサイトを作るには専門的な知識が必須でした。HTMLやCSS、JavaScriptを手打ちでコーディングし、サーバーの設定も自分で行う。それができる人材は限られており、企業のWebサイト制作には数十万円から数百万円の予算が当たり前でした。

当時のWeb制作者は、技術的な知識があるだけで価値を提供できた時代だったと言えます。

現在のWeb制作業界

しかし、2025年の現在、状況は大きく変わりました。

制作ツールの進化:

  • WordPressなどのCMSで、プログラミング不要でサイトが作れる
  • ノーコード/ローコードツールの台頭(Wix、Shopify、STUDIO、ペライチ、Canvaなど)
  • 高品質なテンプレートが数千円で購入できる
  • AIがコードを自動生成してくれる

情報へのアクセス:

  • YouTube、Udemy、オンライン講座の充実
  • 技術情報がネット上に溢れている
  • 無料で学べる環境が整っている

市場の変化:

  • 制作単価の低下
  • クラウドソーシングでの価格競争
  • 海外の安価な制作サービスの参入

正直に言えば、「ただWebサイトを作る」だけなら、もはや専門家である必要はないのかもしれません。

「誰でも作れる時代」の本当の意味

ここで一つ、重要な問いを投げかけたいと思います。

「誰でも作れる」ことと「価値あるものが作れる」ことは、同じでしょうか?

料理に例えると

料理に例えてみましょう。今や誰でもYouTubeでレシピを見て、そこそこの料理を作れます。材料も近所のスーパーで手に入り、調理器具も充実しています。

では、プロの料理人は不要でしょうか? もちろん、そんなことはありません。

  • 素材の選び方や下処理の技術
  • 火加減やタイミングの見極め
  • 季節や状況に応じた献立の提案
  • お客様の好みや体調への配慮
  • 食材のコストと利益のバランス
  • 継続的に品質を保つ仕組み

これらは、レシピを見るだけでは身につかない経験とノウハウです。

Web制作も全く同じです。

「作れる」と「成果を出せる」の違い

確かに、Webサイトを「形として作る」ことは、今や誰にでもできます。しかし、それが事業に貢献するか、目的を達成できるかは別問題です。

ただ作っただけのサイト:

  • デザインはそこそこ綺麗
  • 一応情報は載っている
  • でも、誰も見に来ない
  • 問い合わせも来ない
  • 結局、更新もされず放置される

成果を出すサイト:

  • ターゲットユーザーが明確
  • 検索エンジンからの流入がある
  • 訪問者が求める情報が的確に提供される
  • 問い合わせや購入につながる導線が設計されている
  • 継続的に改善され、成果が向上していく

この違いこそが、プロのWeb制作者が提供すべき価値なのです。

これからのWeb制作者に求められるもの

では、「誰でも作れる時代」に、プロのWeb制作者はどう生き残るべきなのか。私が考える、これからの時代に必要なスキルと姿勢をお伝えします。

1. ビジネスへの理解

技術だけではもう戦えません。クライアントのビジネスを理解し、Webサイトを通じてどう貢献できるかを考える力が必要です。

具体的には:

  • クライアントの業界や競合を研究する
  • ターゲット顧客の行動パターンを分析する
  • Web以外のマーケティング施策との連携を考える
  • ROI(投資対効果)を意識した提案をする

例えば、地方の製造業のサイトを作る場合、「綺麗なサイトを作る」だけではなく、「どうすれば新規取引先からの問い合わせが増えるか」「採用活動にどう活用できるか」という視点で提案できるかが重要です。

2. 戦略設計力

Webサイトは作って終わりではありません。公開してからがスタートです。

必要な視点:

  • なぜこのサイトが必要なのか(目的の明確化)
  • 誰に見てもらいたいのか(ターゲットの設定)
  • どんな行動を促したいのか(ゴールの設定)
  • どうやって人を集めるのか(集客戦略)
  • どう改善していくのか(運用計画)

これらを最初から設計できる制作者は、ツールを使って自作する企業とは明確に差別化できます。

3. 継続的な学習意欲

Web業界の技術やトレンドは、驚くほど速いスピードで変化します。昨年の常識が今年は古くなっていることも珍しくありません。

学び続けるべき分野:

  • 新しい技術やツール
  • SEOやWebマーケティングの最新動向
  • デザインのトレンド
  • アクセシビリティやセキュリティ
  • AI技術の進化とその活用

「これだけ知っていれば大丈夫」という状態は、もはや存在しません。学び続ける姿勢がない制作者は、確実に淘汰されていくでしょう。

4. コミュニケーション能力

技術力と同じくらい、いや、それ以上に重要なのがコミュニケーション能力です。

なぜ重要か:

  • クライアントの本当の課題を引き出す
  • 専門用語を使わず分かりやすく説明する
  • 期待値を適切にコントロールする
  • トラブルを未然に防ぐ
  • 長期的な関係を築く

どんなに技術があっても、クライアントとうまくコミュニケーションが取れなければ、良いサイトは作れません。

5. 専門領域を持つ

「何でもできます」では、もはや差別化が難しい時代です。何かしらの専門領域を持つことが重要です。

専門領域の例:

  • 特定の業界(医療、不動産、ECなど)
  • 特定の技術(アニメーション、SEO、アクセシビリティなど)
  • 特定の課題解決(採用サイト、多言語対応など)

「〇〇のことなら、あの人に頼もう」と思ってもらえる領域を持つことが、これからは特に重要になります。

AIとの共存 - 脅威か、それとも武器か

ChatGPTをはじめとする生成AIの登場は、Web制作業界に大きな衝撃を与えました。「AIがコードを書いてくれるなら、制作者は不要になるのでは?」という声も聞かれます。

AIができること、できないこと

AIが得意なこと:

  • 定型的なコードの生成
  • 既存のパターンを参考にしたデザイン案の提示
  • 大量のデータの分析
  • テキストコンテンツの下書き

AIが苦手なこと:

  • クライアントの本当のニーズを理解すること
  • ビジネス全体を俯瞰した戦略立案
  • デザインの細かなニュアンスの調整
  • 予期しない問題への対応
  • クライアントとの信頼関係の構築

AIを武器にする

私の考えは、「AIを恐れるのではなく、積極的に活用する」です。

実際の活用例:

  • コーディングの効率化(AIに下書きを作ってもらい、人間が調整)
  • デザインのアイデア出し(複数案を瞬時に生成)
  • コンテンツ制作の補助(下書き作成、校正)
  • 分析作業の効率化(データの可視化、レポート作成)

AIを使いこなせる制作者と、拒絶する制作者。どちらが生き残るかは明白です。

重要なのは、「AIは道具である」という認識です。最終的な判断、クオリティの担保、クライアントへの価値提供は、人間にしかできません。

低価格化の波とどう向き合うか

正直に言えば、Web制作の価格は下がり続けています。クラウドソーシングでは、数万円でWebサイト制作を請け負う案件もあります。

価格競争に巻き込まれない戦略

1. 価格ではなく価値で勝負する

安さを求めるクライアントは、質よりも価格を重視します。そういったクライアントと付き合うと、疲弊するだけです。

代わりに、「投資としてのWeb制作」を理解しているクライアントをターゲットにします。そういったクライアントは、適切な価格を払うことを厭いません。

2. 単発ではなく継続的な関係を築く

サイト制作だけで終わるのではなく、運用サポート、改善提案、追加開発など、継続的な関係を築くことで、安定した収益を確保できます。

3. パッケージ化と効率化

よくある要件をパッケージ化し、効率的に制作できる仕組みを作ることで、適正価格を維持しながら、自分の労力も削減できます。

4. ニッチな市場を狙う

誰もが欲しがる「企業サイト制作」ではなく、特定の業界や課題に特化することで、競合を減らし、価格を維持できます。

正直、厳しい時代ではある

綺麗事は言いません。Web制作業界は、以前よりも厳しくなっているのは事実です。

  • 制作単価は下がっている
  • 競合は増えている
  • 技術の変化は速い
  • クライアントの目は厳しくなっている

しかし、だからこそ、本物のプロフェッショナルが求められている時代でもあります。

地方でWeb制作業を営む意味

私は兵庫県丹波篠山市という地方都市で活動しています。「東京や大阪の方が仕事が多いのでは?」と聞かれることもあります。

地方だからこその強み

1. 地域密着の信頼関係

顔が見える関係性は、特に地方では重要です。「地元の制作者」という安心感は、オンライン完結の制作会社にはない強みです。

2. 地域の課題への理解

地方企業特有の課題やニーズを、肌感覚で理解できます。これは、地方に住んでいるからこそ得られる強みです。

3. 生活コストの低さ

都市部に比べて生活コストが低いため、価格競争に巻き込まれにくくなります。

4. ニッチ市場の開拓

地方には、まだWebをうまく活用できていない企業が多く存在します。そこに価値を提供できる余地があります。

オンラインとオフラインの融合

もちろん、地方だからといって地元だけに限定する必要はありません。

  • 地元企業には対面でのサポート
  • 県外のクライアントにはオンラインでの対応
  • 全国どこでも仕事ができる体制

この柔軟性が、個人事業や小規模事業者の強みです。

これからのWeb制作業界で生き残るために

最後に、これからもWeb制作業界で活動していくために、私自身が心がけていることをお伝えします。

1. 誠実であること

技術やスキル以前に、最も重要なのは誠実さです。

  • できないことは「できない」と言う
  • 期待値を過度に上げない
  • 約束は守る
  • 問題が起きたら逃げずに対応する

短期的には損をすることもありますが、長期的には信頼につながります。

2. クライアントの成功を第一に考える

「自分が儲かるか」ではなく、「クライアントの事業が成功するか」を第一に考える。この姿勢は、結果的に自分のビジネスの成功にもつながります。

時には、「今はWebサイトよりも他のことを優先すべき」と正直に伝えることも必要です。

3. 謙虚であり続ける

「これで完璧」と思った瞬間、成長は止まります。常に学び続け、謙虚な姿勢を保つこと。これが、変化の激しい業界で生き残る秘訣です。

4. 楽しむこと

最後に、これが一番大切かもしれません。楽しんでいない仕事は、良い成果を生みません。

技術の進化を楽しむ、クライアントの成功を喜ぶ、新しいことに挑戦するワクワク感を大切にする。そういう気持ちを持ち続けたいと思っています。

さいごに: 変化を恐れず、挑戦し続ける

Web制作業界は、確かに大きな変化の中にあります。「誰でも作れる時代」に、プロの制作者の存在意義が問われています。

しかし、私はむしろこの状況をチャンスだと考えています。

なぜなら:

  • 本物のプロフェッショナルが求められている
  • 技術だけでは差別化できないからこそ、人間力が重要になる
  • AIなどの新しいツールを使いこなせる者が勝つ
  • 真にクライアントのビジネスに貢献できる制作者の価値は、むしろ上がっている

「Webサイトを作る」ことから、「Webを通じてビジネスの成功を支援する」ことへ。

この視点の転換ができるかどうかが、これからのWeb制作者の生き残りを左右すると考えています。

この記事を読んでくださっている方の中には、Web制作を依頼する側の方もいれば、同業者の方もいるかもしれません。

依頼する側の方には、「安いだけの制作者」ではなく、「本当に価値を提供できる制作者」を見極める目を持っていただきたい。

同業者の方には、一緒にこの変化の時代を楽しみながら、お互いに高め合っていけたらと思います。

Web制作業界は、これからも変化し続けるでしょう。その変化を恐れるのではなく、楽しみながら、誠実に、そして情熱を持って取り組んでいく。

それが、私がこの業界で生きていくための道です。


最後に

この記事では、かなり率直に、そして時には厳しい現実についても触れました。しかし、これらはすべて、Web制作という仕事への愛情と、この業界の未来への期待から書いています。

もし、Webサイト制作やWeb戦略についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。技術的なことだけでなく、ビジネス全体を見据えた提案をさせていただきます。

一緒に、価値あるWebサイトを作りましょう。