「ホームページを作ったのに、新患が増えない」「更新のたびに業者に連絡しなければならない」「作ったシステムが現場で使われていない」——クリニックの院長や事務長から、こういった声をよく聞きます。
私は病院システム管理を10年経験した後、Web制作の世界に入りました。その経験から言えるのは、医療機関のホームページ制作には「一般的なWeb制作の常識」が通用しない部分が多いということです。
この記事では、クリニックがホームページ制作で失敗しないために押さえておくべき5つのポイントを、現場目線で解説します。
この記事のポイント(5つ)
- 「デザインが綺麗」より「患者さんが行動できるか」を優先する
- スマートフォン対応は「あるかどうか」ではなく「使いやすいか」で判断する
- 地域×診療科のSEO設計を最初から組み込む
- 更新しやすい仕組みを最初から作っておく
- 「医療の現場を知っている」制作者を選ぶ
ポイント1|「デザインが綺麗」より「患者さんが行動できるか」を優先する
ホームページ制作の打ち合わせでよく出てくるのが「おしゃれなデザインにしたい」「他のクリニックより見栄えよくしたい」という要望です。デザインへの関心は自然なことですが、そこだけに注力すると失敗します。
患者さんがホームページを見るのは、たいていスマートフォンで「近くのクリニック」を検索したときです。その瞬間に患者さんが知りたいのは、「今日診てもらえるか」「何科があるか」「予約はどうすればいいか」 の3点です。
よくある失敗パターン: トップページに大きなビジュアル画像を入れ、院長のあいさつ文が長い。診療時間や予約ボタンがページの下の方にある。スマートフォンで見たとき、電話番号をタップしても発信できない。
デザインの美しさと、患者さんが「行動しやすいか」は別の話です。制作会社に依頼するとき、「予約・電話・診療時間がファーストビュー(スクロールしなくても見える範囲)に入っているか」 を必ず確認してください。
チェックポイント:ファーストビューに入れるべき3要素
- 診療科・クリニック名
- 電話番号(タップで発信できる)
- 予約ボタンまたは診療時間
ポイント2|スマートフォン対応は「あるかどうか」ではなく「使いやすいか」で判断する
「スマートフォン対応(レスポンシブ対応)しています」という説明を受けることが多いですが、「対応している」だけでは不十分です。実際にスマートフォンで操作して、使いやすいかどうかを確認する必要があります。
医療機関を検索するユーザーの7割以上がスマートフォンを使っています。スマートフォンで使いにくいサイトは、それだけで患者さんが離脱する原因になります。
確認すべき具体的なポイント:
- 電話番号をタップするとそのまま発信できるか
- 地図(Googleマップ)がアプリで開けるか
- フォントが小さすぎてピンチアウトしないと読めなくなっていないか
- ボタンが小さすぎてタップしにくくないか
- ページの読み込み速度が遅くないか(3秒以内が目安)
制作会社から納品前のデモを見せてもらうとき、必ずご自身のスマートフォンで操作してみてください。「なんとなく見られる」ではなく「スムーズに使える」かどうかが基準です。
ポイント3|地域×診療科のSEO設計を最初から組み込む
SEO(検索エンジン最適化)は、「公開後にやること」ではなく「作るときから設計するもの」です。ここを後回しにすると、公開してから「なかなか検索で見つけてもらえない」という状況になります。
クリニックの場合、患者さんが検索するキーワードのパターンはほぼ決まっています。
- 「〇〇市 内科」「〇〇駅 皮膚科」(地域+診療科)
- 「〇〇市 花粉症 クリニック」(地域+症状)
- 「〇〇クリニック 予約」(クリニック名+行動)
よくある失敗パターン: 地域名がページタイトルに入っていない。診療科ごとのページが存在しない。「当院について」「診療案内」などの一般的な見出しだけで、検索キーワードとなる言葉が本文に含まれていない。
対策としては、ページタイトルに「地域名+診療科名」を入れることが最低限です。例えば「内科・小児科|〇〇市△△駅の□□クリニック」のような形です。
さらに、診療科ごとにページを分けてそれぞれのページで「よくある症状」「治療の流れ」などを書くと、より多くの検索キーワードで見つけてもらいやすくなります。
ポイント4|更新しやすい仕組みを最初から作っておく
クリニックのホームページは、一度作ったら終わりではありません。休診日のお知らせ、院長の学会出張、新しい医療機器の導入、スタッフの採用情報——定期的に更新が必要な情報は意外と多いです。
更新のたびに制作会社に連絡して費用が発生する仕組みになっていると、結果として更新が滞り、「古い情報がずっと載っている」という状態になります。これは患者さんの信頼を失う原因にもなります。
発注前に確認すべき「更新」の仕組み:
- 自分で更新できる管理画面はあるか
- 更新できる範囲はどこまでか(お知らせだけか、診療時間なども変更できるか)
- 管理画面の操作マニュアルは提供されるか
WordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)を使った制作であれば、自分でお知らせを更新することができます。ただし、医療機関の場合はセキュリティ管理も重要なので、CMSの定期アップデートや管理体制についても確認が必要です。
ポイント5|「医療の現場を知っている」制作者を選ぶ
これが最も重要なポイントです。
一般的なWeb制作会社は、医療機関の制作経験があっても「デザインと構築」はできます。しかし、院内の業務フロー、電子カルテとの関係、診療科ごとの予約ルールの違い、個人情報保護の具体的な配慮——こういった「現場の常識」を知っている制作者は非常に少ないです。
私自身、病院システム管理を10年やってきて感じるのは、「現場を知らないシステム・サイトがいかに現場で使われないか」ということです。
たとえば予約システムひとつとっても、「診療科によって予約枠の単位が違う」「担当医ごとに枠を分けたい」「初診と再診で異なるフォームにしたい」といった要件は、医療現場を経験していないと「そういう要件があること自体」を想像できません。
制作会社を選ぶ際の確認ポイント:
- 医療機関の制作実績があるか(業種・規模を確認)
- 個人情報保護・セキュリティへの対応を具体的に説明できるか
- 現場ヒアリングを丁寧に行ってくれるか
- 納品後の保守・運用体制があるか
- 担当者が医療の現場経験を持っているか
少なくとも「医療機関のサイトを作った経験があるか」「個人情報の取り扱いについて具体的に説明できるか」の2点は必ず確認してください。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 1 | デザインより「患者さんが行動できるか」を優先する |
| 2 | スマートフォンで実際に操作して使いやすさを確認する |
| 3 | 地域×診療科のSEO設計を制作段階から組み込む |
| 4 | 自分で更新できる管理画面の仕組みを最初に作る |
| 5 | 医療現場の実態を知っている制作者を選ぶ |
ホームページは「作ること」が目的ではなく、「患者さんに来てもらうこと」が目的です。上記5つのポイントを発注前のチェックリストとして活用してください。
門王にご相談ください
病院システム管理10年の経験を持つエンジニアが、クリニックのWeb制作・システム開発を直接担当します。「今のサイトの何が問題か診てほしい」「これから作りたいが何から始めればいいかわからない」という段階からお気軽にどうぞ。