はじめに:なぜ「発注してから後悔する」が起きるのか

「完成したホームページを見たら、イメージと全然違った」「追加費用が次々と発生した」「納品されたのに検索に全く出てこない」——ホームページ制作の外注トラブルは、業界を問わず頻繁に発生しています。

こうしたトラブルのほとんどは、制作業者の問題である以前に、発注者側の準備不足が原因です。

ホームページ制作の見積もりを取る前に、業者に連絡する前に、決めておくべきことがあります。この記事では、長年にわたってホームページ制作・ウェブシステム開発に携わってきた経験から、発注前に明確にしておくべき10の項目を解説します。

準備が整った状態で発注することは、トラブルを防ぐだけでなく、制作業者から見た「仕事がしやすいクライアント」になることを意味します。それは結果として、より良い提案・より丁寧な対応・より高品質な成果物につながります。


その前に:「目的」なきホームページは存在してはいけない

10の項目に入る前に、最も根本的なことを確認します。

「ホームページを作りたい」は目的ではありません。

「名刺にURLを載せたい」「なんとなく会社っぽく見せたい」「競合他社が持っているから」——これらは動機ではありますが、ホームページの目的ではありません。

ホームページの目的は必ず「ビジネスの成果」に結びついている必要があります。問い合わせを増やしたい、予約を取りたい、採用応募を集めたい、オンラインで商品を売りたい、既存顧客への情報提供を効率化したい——これらが「目的」です。

目的が曖昧なまま制作を始めると、業者は「見た目が良いもの」を作るしかなくなります。見た目の良さとビジネス成果は必ずしも一致しません。10の項目は全て、この「目的」を軸として考えてください。


項目1:何のためのホームページか——KGIとKPIを言語化する

KGIとKPIとは

KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標) とは、最終的に達成したいビジネス上のゴールを数値で表したものです。「月に10件の問い合わせを獲得する」「月商を現在の1.5倍にする」「採用応募を月3件以上受け取る」といった形です。

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標) は、KGIを達成するための中間指標です。「月間セッション数1000」「お問い合わせページへの到達率5%」「直帰率60%以下」などがKPIになります。

なぜ発注前に決めるのか

KGI・KPIを事前に決めておくことで、制作業者への要件が具体的になります。「月10件の問い合わせ」というKGIがあれば、問い合わせフォームの設計・CTA(行動喚起ボタン)の配置・コンバージョン計測の実装が必須要件として明確になります。

逆に言えば、KGIもKPIも決めずに「良いホームページを作ってください」と依頼することは、「良い建物を建ててください」と言うようなものです。住宅なのかオフィスなのか倉庫なのかによって、設計は根本から変わります。

決め方のヒント

まず現状を把握します。現在、月に何件の問い合わせがありますか? その問い合わせはどこから来ていますか? ホームページからゼロであれば、まず「月3件」という控えめなKGIから始めることが現実的です。

次に、KGIを逆算してKPIを設定します。「月10件の問い合わせ」を達成するために、問い合わせフォームへの到達率が2%だとすれば、月500セッションが必要という計算になります。この数字が「どのくらいのSEO・広告投資が必要か」という議論の起点になります。


項目2:誰に来てほしいのか——ターゲットとペルソナの設定

「全員に来てほしい」は誰にも刺さらない

ターゲットを「20代〜60代の男女」のように広く設定することは、実質的にターゲットを設定していないことと同じです。全員に向けたメッセージは、誰の心にも響きません。

ホームページのデザイン・コピー・コンテンツ・色使い・フォント・ナビゲーション構造——これら全ての設計判断は「誰に届けるか」によって決まります。

ペルソナの具体的な作り方

ペルソナとは、ターゲットの典型的な一人を架空の人物として具体的に描いたものです。以下の項目を実際に書き出してみてください。

  • 年齢・性別・職業・居住地域
  • 家族構成・年収・趣味
  • 普段どのデバイスで検索するか(スマートフォン中心かPCか)
  • どんなキーワードで検索しそうか
  • 何に悩んでいてあなたのサービスを探し始めたか
  • どんな言葉・表現に信頼を感じるか
  • 反対にどんな表現に違和感を覚えるか

これを「整体院の例」で具体化すると、「40代前半の女性、デスクワーク中心のオフィスワーカー、肩こり・腰痛に長年悩んでいる、スマートフォンで『〇〇市 整体 肩こり』と検索する、病院に行くほどではないが慢性的な不調を解消したい、口コミと料金の透明性を重視する」というようなペルソナが出来上がります。

このペルソナがあれば、制作業者はトップページの第一印象・キャッチコピー・症状別のコンテンツ構成・料金表示の方法など、全ての設計判断をペルソナに照らして行えます。


項目3:競合サイトの調査——「勝てる場所」を把握する

競合を知らずに戦略は立てられない

あなたのホームページが検索で上位表示されるということは、現在その位置にいる競合サイトを「上回る評価をGoogleから得る」ということです。競合を分析せずにホームページを作ることは、対戦相手を知らずに試合に臨むようなものです。

発注前に行う簡易競合調査

まず、あなたが検索上位に出たいキーワードを3〜5個書き出してください。次に、そのキーワードで実際にGoogle検索を行い、上位5〜10サイトを確認します。

確認する内容は以下の通りです。

  • どんなコンテンツ(ページ・記事)が豊富か
  • デザインのトーン(プロフェッショナル系か親しみやすい系か)
  • 料金の見せ方(明示しているか非公開か)
  • 問い合わせ・予約への誘導の仕方
  • スマートフォン表示の品質

このリサーチ結果を業者に共有することで「このサイトより〇〇の点で優れたものを作りたい」という具体的な要件になります。また「このキーワードはすでに強い競合が多い」という判断から「別のキーワードを狙う」戦略変更もできます。


項目4:必要なページと機能の洗い出し

ページ構成は事前に考える

「業者に任せる」ことはできますが、業者が提案するページ構成は「一般的なビジネスサイトの平均的な構成」です。あなたのビジネスに本当に必要なページ・不要なページは、あなた自身が最もよく知っています。

一般的なビジネスサイトのページ構成の例:

  • トップページ(第一印象・全体概要)
  • サービス・商品紹介ページ
  • 料金ページ
  • 会社概要・プロフィールページ
  • 実績・事例・ポートフォリオページ
  • お客様の声・口コミページ
  • よくある質問(FAQ)ページ
  • ブログ・コラムページ
  • お問い合わせページ

これらのうち何が必要で、何が不要で、何が独自に必要かを発注前にリストアップしてください。

機能要件も明確にする

「機能」とは、ページの表示以外の動的な処理のことです。以下のうち必要なものを発注前に整理してください。

  • お問い合わせフォーム(自動返信メールの有無)
  • 予約システムの有無と連携先
  • 会員ログイン機能
  • 決済機能(クレジットカード・各種決済)
  • 地図の埋め込み
  • SNSの連携・シェアボタン
  • 多言語対応
  • アクセス解析ツールの設置

機能を後から追加することは技術的には可能ですが、設計段階から組み込む場合より工数・費用が増えることが多く、整合性の問題も生じます。


項目5:コンテンツ(素材)の準備状況を把握する

「コンテンツは業者が作る」という誤解

ホームページ制作業者が提供するのは「制作」であって「コンテンツの取材・創造」ではないケースが大半です。特に格安の制作業者はコンテンツ制作をスコープ外としていることが多く、素材を渡さないと制作が進まない・または汎用的なダミーコンテンツで埋められることになります。

発注前に以下を確認・準備してください。

写真・画像 会社・店舗・施術室・商品などの写真は手元にありますか? スマートフォンで撮影したものでも、品質次第で使用可能です。プロのカメラマンによる撮影が必要な場合、その費用と段取りを別途考える必要があります。フリー素材の使用には著作権上の注意が必要です(後述)。

テキスト(文章) サービスの説明文、会社概要、代表プロフィール、お客様の声などを自分で書けますか? コピーライティングを業者に依頼する場合は追加費用が発生します。

ロゴ 既存のロゴデータ(aiファイル・pngファイルなど)はありますか? ない場合はロゴ制作を先行する必要があります。


項目6:予算の考え方——「いくらかけるか」ではなく「何を得るか」

ホームページの費用は「投資」として考える

ホームページの制作費用を「コスト(経費)」として考えると、必然的に「安いほど良い」という判断になります。しかし、適切に設計されたホームページは、制作費用の何倍もの売上・問い合わせをもたらす「投資」です。

「月10件の問い合わせが増え、そのうち2件が成約し、1件の客単価が5万円であれば、月10万円の売上増加」という試算ができれば、「100万円の制作費は10ヶ月で回収できる」という投資判断になります。

費用に含まれるものを確認する

制作費用の見積もりには、含まれるものと含まれないものがあります。発注前に以下を確認してください。

  • ドメイン取得・維持費(年額)
  • サーバー費用(月額・年額)
  • SSLの費用
  • 制作後の修正・更新対応の有無と費用
  • 保守・セキュリティ対応の費用
  • アクセス解析の設定費用

これらが「込み」なのか「別途」なのかを必ず確認します。特に「制作後の軽微な修正が有償か無償か」は後のトラブルになりやすい項目です。


項目7:スケジュールの現実的な把握

ホームページ制作にかかる期間の目安

一般的なビジネスサイト(10ページ程度)の制作期間は、要件定義から公開まで2〜3ヶ月が標準的です。「来週までに欲しい」という依頼は、品質を大きく下げるか、対応できる業者がいないかのどちらかです。

期間が延びる主な原因は、クライアントからの素材・フィードバックの遅延です。業者の作業待ちではなく「クライアントの確認・返答待ち」でスケジュールが伸びることが非常に多いです。

逆算してスケジュールを設定する

「この日までに公開したい」という日付が決まっている場合(開業日・イベント日・新商品発売日など)、その日から逆算して「いつまでに発注すべきか」「いつまでに素材を準備すべきか」を計算します。

  • 公開希望日の 3ヶ月前 には発注する
  • 公開希望日の 2ヶ月前 には全素材を業者に渡せる状態にする

これが現実的なスケジュール感です。


項目8:更新・運用は誰がどのように行うか

公開後の運用を見据えた設計が必要

ホームページは公開して終わりではありません。営業時間・料金・スタッフ・実績・ブログ記事——これらを更新し続けることで、SEOの評価が維持・向上されます。更新されないホームページは「死んでいる」とGoogleに判断され、評価が下がります。

発注前に決めておくべきことは以下の3点です。

  1. 更新は自分でやるのか業者に依頼するのか
  2. 自分でやる場合はどの程度の技術的な知識があるか
  3. 更新頻度の目安はどのくらいか

CMSの選定に影響する

自分で更新する場合は、非エンジニアでも操作できるCMS(コンテンツ管理システム)が必要です。WordPressが最も一般的ですが、セキュリティ管理のコストがあります。静的サイトジェネレーターを使ったサイトの場合、マークダウンやGitの知識が必要になることがあるため、運用者のスキルに合わせた設計が必要です。


項目9:著作権と法的要件の事前確認

ホームページ公開は「パブリッシング」行為

ホームページを公開することは、不特定多数に対して情報を発信する行為です。掲載するコンテンツには著作権・商標権・肖像権・各種法規制が適用されます。

発注前に確認すべき法的事項を整理します。

画像の著作権 使用する予定の写真・イラスト・アイコンの権利関係は明確ですか? フリー素材サイトの画像は無条件に使えるわけではなく、商用利用の可否・改変の可否・クレジット表記の要否などが利用規約によって異なります。

テキストの著作権 他社サイトの文章を参考に「似た表現」を書くことは問題ありませんが、そのままコピーすることは著作権侵害になります。生成AIで作成した文章には著作権が発生しないため、コピーサイトを作られても法的に対抗できません。

業種固有の法規制 医療・美容・食品・金融・不動産など多くの業種で、ホームページに掲載できる表現が法律で制限されています。「効果を保証する」「日本一」「他社より優れている」などの表現が景品表示法に触れるケースがあります。

特定商取引法の表記 商品・サービスをオンラインで販売・申し込みを受け付ける場合、特定商取引法に基づく表記が必須です。記載漏れは行政指導の対象になります。

これらの確認を制作業者に一任することには限界があります。法的な判断は制作業者の専門領域ではないからです。特にコンテンツの法的チェックは、専門家(弁護士または知的財産管理技能士)に確認することを強く推奨します。


項目10:制作業者との契約内容の確認

「口約束」「メールの約束」はトラブルの元

ホームページ制作の業界では、正式な契約書を交わさないまま制作が進むケースが珍しくありません。「メールのやり取りが証拠になる」という考えもありますが、後のトラブルを防ぐためには書面による契約書の締結を強く推奨します。

契約書で確認すべき重要項目

著作権の帰属(最重要) 制作されたデザイン・コード・素材の著作権が、納品後にクライアントに移転するのか、それとも業者に留まるのかを明確にしてください。著作権が業者に留まる契約の場合、業者を変更しても同じデザインを使い続けることができない可能性があります。

ソースコードの開示 制作されたウェブサイトのソースコード(HTMLファイル・CSSファイル等)を納品物として受け取れるかどうかを確認してください。受け取れない場合、業者が廃業・サービス終了した際にサイトの移行が困難になります。

修正・変更の範囲と費用 制作中の修正がどこまで無償で対応されるか、回数制限があるかを明確にしてください。「1ページの修正」の定義が業者によって異なるため、具体的に確認することが重要です。

保守・障害対応 公開後にサイトが表示されなくなった場合、誰が・いつ・どのように対応するかを確認してください。保守契約の内容と費用、対応時間(営業時間内のみか24時間対応か)を事前に把握しておきます。

ドメイン・サーバーの名義 ドメインとサーバーの契約名義が自社になっているかを確認してください。業者名義になっている場合、業者との関係が悪化したときにサイトを失うリスクがあります。


まとめ:準備した分だけ、結果が変わる

10の項目を振り返ります。

  1. KGIとKPIの設定
  2. ターゲット・ペルソナの明確化
  3. 競合調査
  4. 必要なページと機能の洗い出し
  5. コンテンツ素材の準備
  6. 予算の考え方
  7. スケジュールの逆算
  8. 更新・運用の設計
  9. 著作権と法的確認
  10. 契約内容の確認

これらは全て、「発注してから後悔しない」ための準備です。

すべてを完璧に準備してから発注する必要はありません。しかし、これらについて「考えたことがある」状態で相談するのと「何も考えずに丸投げする」状態で相談するのとでは、最終的な成果物の品質に大きな差が生まれます。

ホームページは作って終わりではなく、ビジネスと共に育て続けるものです。最初の発注を丁寧に行うことが、その後の長期的な成果に直結します。


ホームページ制作の相談は門王へ

発注前の段階から、目的・ターゲット・競合・法的要件まで含めたトータルな相談に対応しています。

門王には国家資格「一級知的財産管理技能士(コンテンツ専門業務)」保有者が在籍しており、著作権・商標・コンテンツの法的チェックも制作と一体で対応可能です。全国約470名しかいない希少資格です。

「まだ何も決まっていない」段階からのご相談も歓迎しています。

相談・お問い合わせ → https://monou.jp 全国対応 / オンライン相談可