Interview
「クラウドは使わない」選択。園内閉域網で3棟をつないだ保育園専用グループウェア
園舎は3棟。ホワイトボードと紙のノートで回していた情報共有。「書くまでもない」の積み重ねが、行き違いになっていました。
「ホワイトボードに書き込むという作業が無駄だったと、導入するまで気づいていませんでした。当たり前になっていたんです。」
—— 保育園 主任保育士 様
本事例は、園名・所在地を伏せて掲載しています。園内のシステム構成が特定されることを避けるため、お客様と協議の上で判断しました。
掲載内容は、主任保育士様にご確認いただいています。
解決した課題
現場で起きていたこと
- 園児の年齢別に園舎が3棟に分かれ、各園舎の事務所ごとにホワイトボードで情報を共有
- 各園舎で「関係ない」と判断された情報が、時間差で出勤する職員に届かない
- 記録はクラスごとのノートと共有フォルダ。同時に編集できず、事務所まで行かないと見られない
- 「書くまでもない」「明日でいい」の積み重ねが、職員間や保護者とのトラブルに発展することもあった
これまで越えられなかった壁
- 園児の情報をインターネット上に置くことへの懸念から、クラウド型は断念していた
- 園内で完結させるにはサーバが必要で、見積もりが一桁変わってしまう
- 試用した既製品はいずれも機能が多く、操作が複雑だった
- 園内にネットワークがなく、園舎ごとに別々のインターネット回線が引かれていた
- 職員のパソコン習熟度に差があり、ファイルの誤消去や移動が頻発していた
門王の処方箋
グループウェアを入れることが目的ではありませんでした。使うのはパソコンが得意な人ばかりではない——その前提を動かさないまま、どこまでやれるかという設計です。
設計・導入のポイント
- 初回の面談に、実機を持っていく:仕様の説明から入らず、簡易的なサーバとデモを持参。「どんな物が園に入るのか」を見ていただくところから始めました。
- 園内で完結する構成:園児の情報をインターネット上に置かない、という要件を出発点に設計。園の中だけで動く形にしています。
- 機能を絞る:既製品を諦められた理由が「機能が多くて複雑」でした。必要なものだけを作ることで、画面上の選択肢そのものを減らしています。
- ネットワークから引き受ける:園舎ごとに別々の回線が引かれ、園内ネットワークが存在しませんでした。第一園舎の回線を無線で他棟へ拡張する方式を提案し、工事まで実施。回線2本分の月額が不要になり、1年少々で費用を回収できる計算です。
- 反対していた職員と、先に話す:導入に反対されていた年配の職員には、まず普段のスマートフォンの困りごとを伺うところから。そこで出た意見を実際に組み込むことで、「自分たちが作ったもの」として使っていただける形にしました。
- スマートフォンで完結させる:報告書はテンプレートを用意し、入力と写真の添付だけで形になるように。写真をデジタルカメラからUSBで移す工程もなくなりました。
- 確認の手間を、こちらで引き受ける:既存の契約先への問い合わせなどは可能な限り門王側で調べ、先方への電話にも同席しています。
インタビュー:ホワイトボードがなくなった日
—— 導入前は、どのようなことにお困りでしたか。
「園舎が園児の年齢別に3つに分かれていて、それぞれに保育士の詰め所があります。朝はメインの事務所に集まって朝礼をして、そこのホワイトボードに情報を書き出すのですが、各園舎で『これは関係ない』と判断した内容が、時間差で出勤してくる職員には関係あったりする。そこで行き違いが起きていました。記録もクラスごとのノートや共有フォルダなので、同時に編集できませんし、事務所のパソコンまで行かないと見られません。些細なことの積み重ねなのですが、それが職員同士のトラブルや、保護者の方とのトラブルにつながることもありました。」
—— それまでにも、解決を試みておられたそうですね。
「ICT導入の補助金がありますので、何度か専門の業者さんに相談しました。ただ、いいものがなかったんです。インターネットを使うグループウェアはいくつかありましたが、園児の情報をインターネット上に書き込むのは、誤操作で外に出てしまう心配があって断念しました。試してみたものはどれも機能が多くて操作が複雑で、パソコンにある程度詳しい職員でも面倒だと感じてしまう。園の中だけで完結させるにはサーバが必要で、そうすると金額が一桁変わってしまう。それで、諦めているところがありました。」
—— ご相談の前、不安だったことはありますか。
「フルオーダーは高いという印象がありましたし、園内にサーバを置くというだけで予算オーバーだと思っていました。ただ、機能を絞れば手の届く金額で入れられると聞いて、話だけでも聞いてみようと。それと、結局は操作が難しいのだろうという不安もありました。以前、年配の職員も使いやすいようにとご相談したときに、文字の大きさを変える機能を案内されたことがあって。IT業者さんというのはそういうものだ、という印象があったんです。」
—— 実際にご相談されてみて。
「最初の面談のときに、簡易的なサーバを実際に持ってきてデモをしてくださって、その場でイメージができたのが大きかったです。これまでの業者さんは、サーバがどうとか、スペックがどれくらい必要かという話をされて、何をおっしゃっているのか分からなかった。門王さんも最初はそういう話をされたのですが、それが分からないとお伝えしたら、そこから先は『どんな物が園に入るか』という話に切り替えてくださいました。」
—— 導入の過程で、特に助かった点は。
「以前は『この情報を教えてください』『分からなければ既存の業者に問い合わせてください』と言われることが多く、私が聞いても、返ってきた答えが正しいのかどうか分からない。それで何往復もすることがありました。門王さんは『まず自分で公開情報を調べてみます』『私から先方に問い合わせます』『契約者ご本人でないと駄目だという回答なら、電話の横にいて一緒に聞きますから安心してください』と。本当に丁寧に対応していただきました。」
—— 大変だったことはありますか。
「そもそも園内にネットワークというものがありませんでした。園舎ごとにインターネット回線を引いていて、それぞれが独立している状態です。園の中だけで完結する仕組みをどうするか、という検討が必要になりました。ただ門王さんはネットワークも対応できるということで、第一園舎の回線を無線で他の園舎に広げる方法を提案してくださって、工事までしていただきました。機材や工事の費用は想定外でしたが、インターネット回線2本分の月額がなくなるので、1年と少しで元が取れる計算です。」
—— 導入に反対されていた職員の方もいらしたとか。
「これまでの検討の経緯から、年配の職員がグループウェアに苦手意識を持っていて、導入そのものに反対していました。ただ門王さんは、普段スマートフォンで困っていることは何ですか、といった、まったく関係のないところから話を聞いてくださって。そこで出た意見を実際にグループウェアに入れてくださったので、その職員が『自分たちが作っている』という感覚になったんです。いまはむしろ、若い職員に使い方を教えるくらい乗り気になっています。」
—— 使い始めてからの変化は。
「最初は、ホワイトボードに書いたことをグループウェアにも入力するという二度手間があって、入力ミスで問題になることもありました。それが1か月ほどで、グループウェアに書いたものをホワイトボードに写す、という逆の流れになって。いまはホワイトボードに書くこと自体がなくなりました。それぞれがグループウェアを見て把握しています。以前は前日の退勤前に朝礼の内容を書いていましたが、その時間もなくなりました。更新は通知で届くので、空き時間に確認できます。電話で伝えていたことも減りました。緊急のときは今でも電話ですが。」
—— 一番変わったと感じるのは、どこですか。
「気軽に書き込めるようになったことです。ホワイトボードだと『ちょっとしたことだから書くまでもない』『早く帰りたいから明日でいい』『書き忘れたけどまあいいか』となりがちで、若い職員は書きづらかったかもしれません。それがなくなって、意見交換が活発になりました。あとは、新しく入った職員にも公開できる機能をつけていただいたので、運動会の流れやこれまでに起きた問題など、毎年繰り返す内容を口頭で伝えなくても見てもらえる。これは新入職員に好評です。」
—— 数字で言える部分はありますか。
「ホワイトボードに書き込むという作業がなくなったことが、やはり一番大きいです。導入前は当たり前になっていたので、それが無駄な作業だと気づいていませんでした。報告書も、パソコンのある事務所に寄らずスマートフォンで完結するので、作成時間は人によっては10倍近く早くなっていると思います。写真もデジタルカメラで撮ってUSBでパソコンに移していたのが、スマートフォンで撮ってそのまま送るだけ。USBケーブルを探している時間より早く終わります。内容や時期で検索できるのも好評です。」
—— 導入期間中に、節分の鬼役もされたとか。
「園に何度も出入りしていただくうちに、園児にも優しく接してくださって、すごく人気があったんです。ちょうど導入期間中に節分がありまして、うちは男性職員が園長しかいないものですから、鬼役をお願いできませんかとご相談したら、二つ返事で引き受けてくださいました。それ以来、園児が『鬼の先生』と呼ぶようになって。いい時間でしたね。」
—— 同じように検討されている園があるとしたら、何を伝えたいですか。
「園内のコミュニケーションツールの導入に迷っている方、これまで検討したけれどうまくいかなかった園も、もう一度相談してみる価値はあると思います。グループウェアにこだわらず、報告書の作成に特化した仕組みだけ、といったご依頼もできるそうです。いまはとにかく、ITで困ったことがあれば門王さんに相談しています。」
この案件について
この園では、それまでにも何度かICT化の検討をされていました。うまくいかなかった理由は、技術ではなく前提のほうにあったと思います。園児の情報を外に置きたくない。機能は少ないほうがいい。パソコンが得意な人ばかりではない。この三つを動かさずに解ける方法を探すのが、今回の仕事でした。
門王は25年以上のLinux・OSS開発の実績を持ち、業務システムの開発からネットワーク工事、サーバの設置までを一人で通して対応しています。「前に相談したけれど、うまくいかなかった」というご相談こそ、一度お聞かせください。