Case Study
アンチウイルスサーバの緊急復旧(複数拠点企業 様)
「復旧まで3週間」と回答された約700台分の防御を、48時間以内に。壊れたサーバを直さず、既存のファイルサーバに機能ごと移しました。
「壊れたサーバを直すことが、最短とは限りません。守るべきものが700台の端末の防御なら、筐体にこだわる理由はありませんでした。」
—— 門王
本事例は、お客様およびベンダー様との守秘の観点から、業種・所在地・社内システム名を伏せて記載しています。
掲載しているのは、同種の障害に備える上で判断材料になる範囲の技術的な内容に限っています。
解決した課題
直面していた危機
- HDD交換時の作業ミスにより、約700台のPCを管理するアンチウイルスサーバが機能停止
- パターンファイルがリアルタイムに更新されず、新規端末の追加もできない状態
- ゼロデイ攻撃を含め、防御が落ちている時間そのものがリスクになる
技術・調達の壁
- 当該サーバは保守契約外。スポット対応の回答は「OS領域からの再構築」で複数業者の手配が必要、期間は3週間
- 社内システムごとに積み上げられたスキャン除外設定が、どこにも保存されていない
- 除外設定を再現できなければ、復旧した瞬間から業務システムに支障が出る
社内のシステム管理者様の希望は「最長でも3日以内」。契約業者様の回答は「3週間」。この差を埋められる事業者を探しておられる、という状況からのご相談でした。
門王の処方箋
復旧のゴールは「壊れたサーバを直すこと」ではなく「700台の防御を戻すこと」です。この二つを切り離した時点で、修理を待たない道が見えました。
復旧設計のポイント
- 修理せず、別のサーバへ機能を移す:サーバ用ディスクは高額な上に調達に数日、OS導入と設定にさらに数日。稼働していたのがアンチウイルス機能のみと確認できたため、修理そのものを工程から外しました。
- 既存のファイルサーバを転用:以前に門王が導入したWindows Storage Serverのファイルサーバが、将来のファイル解析を見込んで余裕のある性能で用意されていました。新規調達をせず、この既存資産に機能を載せています。
- 未使用のLANポートで、IPアドレスを引き継ぐ:そのファイルサーバはLANインターフェイスを4つ持ち、インターネット・支社内・本社接続の3本しか使っていませんでした。空いていた1本に旧サーバのIPアドレスを割り当て、端末側の接続先設定を1台も変更せずに復旧しています。
- 除外設定を、壊れたディスクから救出:契約業者様からは取り出し不可と説明されていましたが、破損していない領域にファイルが残っており、内容の抽出に成功。グループ単位・端末単位で突き合わせて再現しました。
- アンチウイルスから、EDRへ:従来はアンチウイルス機能のみの導入でした。復旧に合わせて、エンドポイントセキュリティとEDR機能を備えた構成へ入れ替えています。
技術解説:3週間と48時間を分けたもの
—— 同じ障害に対して、なぜここまで見積もりが違ったのですか。
前提が違います。契約業者様の回答は「壊れたサーバを、OS領域から作り直す」前提でした。サーバ用ディスクの調達に数日、OSの導入と設定にさらに数日、そこに複数業者の手配が加わる。その前提なら、3週間という数字は決して不当ではありません。ただ、そのサーバで動いていたのはアンチウイルス機能だけでした。止まっているのは筐体ではなく700台の防御だと考え直せば、直すという工程自体を外せます。
—— 移し先のサーバはどう用意したのですか。
新しくは買っていません。その会社には以前、私が導入したWindows Storage Serverのファイルサーバがありました。導入時に、いずれそのサーバでファイル解析を行うことを見込んで、余裕のある性能のものを選んでいたんです。その余力が、そのまま今回の受け皿になりました。自分で入れた機械なので、性能も構成も調べ直さずに判断できたことが、初動の速さにつながっています。
—— 700台の端末設定は、どうやって変えずに済ませたのですか。
変えていません。IPアドレスを引き継いだからです。そのファイルサーバにはLANインターフェイスが4つあり、インターネット、支社内、本社接続の3本しか使っていませんでした。残る1本に用途がないことを確認して、そこに旧サーバのIPアドレスを割り当てています。端末側から見れば、同じアドレスに同じ役割のサーバが戻ってきただけです。700台に個別の作業をしていたら、それだけで数日が消えていました。LANの敷設とVLAN設定は、保守業者様と連携して当日中に済ませています。
—— 除外設定は「取り出せない」と言われていたそうですね。
今回いちばん重い部分でした。管理職単位で独自のシステムが入っていて、スキャンの除外設定がかなり細かく積み上がっていたんです。これが失われたまま復旧すれば、防御は戻っても業務システムのほうが止まりはじめます。少なくとも数日は現場が混乱したはずです。取り出せないと説明されていましたが、破損の状況次第では可能性があると考え、壊れていない領域からファイルへのアクセスを試みました。結果として内容を抜き出すことができ、設定を再現できています。除外設定は「不具合が出ていない」ことでしか正しさを確認できません。だからこそ、元のデータを取り戻せるかどうかが決定的でした。
—— 当日の流れを教えてください。
ご依頼をいただいた当日に状況を確認し、翌日に現地で作業という段取りです。本来は初日から着手する予定でしたが、製品のアップグレードがクライアント側へ正しく反映されるかの確認に回答が1日かかったため、翌日にずらしました。当日はファイルサーバの設定変更、LANの敷設、VLAN設定、OS設定の変更、アンチウイルスサーバの構築、除外設定の突き合わせ、クライアントへの配信と動作確認まで、14時間続けての作業です。当日起動していた約500台への配信を確認したところで完了としました。ご希望の3日に対して、48時間以内に収まっています。
—— その最中に、不審な端末が見つかったと。
作業の途中で、挙動のおかしい端末が1台見つかりました。社内のシステム管理者様とすぐに連携してネットワークから隔離し、その後に初期化まで対応しています。防御が落ちている期間があった以上、こうしたものは出てくる前提で見ておく必要があります。復旧作業と並行して監視の目を持てるかどうかは、緊急対応では小さくない差になります。
この案件について
即日の判断ができたのは、門王に同製品の導入経験があり、加えて以前にファイルサーバを納めた縁でネットワーク構成を把握していたためです。調査からではなく、既知の環境の上で「何を使い回せるか」から考えられたことが、そのまま日数の差になりました。
緊急対応・現地対応・14時間の連続作業・ハードウェアの取り回しが重なったため、費用は一般的な相場より高くなりました。それでもご担当者様と支社長様に納得の上でお出しいただけたことに、あらためて感謝しています。
門王は25年以上のLinux・OSS開発の実績を持ち、Webサイトや業務システムの制作だけでなく、サーバ・仮想基盤の保守やこうした緊急復旧もお引き受けしています。「3週間と言われたが、待てない」という場面こそ、一度ご相談ください。